バガの壁(2)
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これまでのお話

(7月21日)

あと2日しか登攀活動期間がないので,押えるべきルートを押 えることにする。

石際・佐原→バガブースパイアー北東リッジ
朝4時起き。電気が止まっているので,ランプの明かりの下,配給のパンを食べる。隣に座っていたワム(Wham知らんでしょうね)っぽいお兄ちゃん。わしの25年物のビアンキのセーターを見て自転車やってるのかときいてきた。彼もNEリッジらしい。ヘッドランプなしで歩けるまで明るくなってきてから,前後して出発する。

クレセント・スパイアーから見たバガブー・スパイアー。とんがっています。

バガブー・クレセントコルへは100mちょっとの簡単な岩登りとなる。この取付きに兄ちゃん3人パーティーにタッチの差で先に着く。 コルから簡単なスラブを登り,広いバンドから実質的な登攀開始。ここから3ピッチがハイライト。

2ピッチ目 ちょっと登りにくいフレーク。

4ピッチ目 快適なコーナー

上部は傾斜のないチムニー状で易しいが,昨日の氷雪が付着し,これを落としながらのクライミングとなる。

北峰直下のラッペルポイントで登攀終了とする。 北峰から南峰へのトラバースと南稜の下降がこのルートの核心 である。昨日,辞書を片手にガイドブックで一夜漬けしたノダ。 ちゃんぺら作りました

北峰直下から見る南峰方面。

ノッチ手前の45°スラブ。後方は北峰。

ジャンダルムからのラッペル

伝統的に半分のクライマーが日没(今の時期は10時)までに 小屋へ帰れないらしいが,特に急がなくても6時半には帰還す ることができた。

小林・坂口→スノーパッチスパイアー,サーフズ・アップ
このルートは,下部のルートファインディングが難しいが,上 部は快適なクラックが続く人気ルートである。
しかし,この日は下部のフリクション主体のパートに氷雪が残 り,最悪の条件で,神経をすり減らされるクライミングとなっ た。

南峰(秘密の宝箱があるらしい)からはクラウス・マッカーシ ーをラッペルする。こちらもヘッドランプのお世話にならず小 屋に帰還。

カナダ山岳会女性登山教室の方に野菜スープを分けていただく。おいしゅうございました。
NEリッジの3人組も明るいうちに帰ってくる。このルートよかったねーと握手を交わす。

本日の格言「山,高きが故に尊からず。山,とんがりをもって よしとす。」

(7月22日)

石際・佐原→スノーパッチスパイアー,フラミンゴ・フリング (中退),同バッキンガムルート(中退)

登攀最終日ということで?,ワイド系のクラックルートに行くこ とにする。
南峰に突き上げているクラック・システムがフラミンゴ・フリング

取付きから易しいクラックを3ピッチほど登り,実質的な登攀に入る予定が,黒い苔(lichen=ライクン,よく滑る)が生え,風化した岩に少々登攀意欲をそがれてしまった。

4ピッチ目のレイバックで敗退。晴ちゃんもいいと言うので,下降に移る。
途中,ロープが引っかかったりし,かなり消耗する。取付きに戻り,まだ時間があったので,隣のバッキンガムルートを登れるだけ登ることにする。
結局,4ピッチ半登ったところで小林・坂口組が下降して来て,一緒にラッペルに入る。

小林・坂口→スノーパッチスパイアー,バッキンガムルート

別名「ジョイアブル・ウエイ」と言われるこのルートも,やはりライクンが繁茂し岩場全体が黒くなっている。
下部は易しいクラックが続き,上部は立ってきていい感じの壁 となるが,最終ピッチはライクンに覆われ,ルートが消滅して いた。

ここからラッペル。懸垂の支点はすべて岩角にスリングのステ ーションで,神経を使う。

ハットに戻り,登山学校のガイドさん等に「ワイド・クラックはどうやった?」ときかれて,敗退した話をしたが,フラミンゴ・・・は誰も知らなかった。Nobody knows!

バガブースパイアーから見るスノーパッチ。池野さん,このてっぺんに立ちたかったヨー。

本日の教訓「知らない岩場に行ったら,人気ルートを登るべし!」

(7月23日)

ハットから見上げた朝焼けに染まるスノーパッチ(左)とバガブー(右)

管理人のフェリックスに見送られ小屋を後にする。
のんびりとした気分で歩くトレールには,入山時に気がつかな かった,すばらしい自然の美しさがあった。

マイナス・イオンの滝

ハット〜駐車場(2H)

キャンモアのAKAI MOTELに転がり込み,近くのレストランで夕 食を食い,その後もスーパーで買出しして食いまくる。
こうして「バルジ大作戦」は失敗に終わった。



♪「パリ・テキサス」のテーマが流れているつもり・・・

 完



(ちょっとした情報)
★キャンモアのAKAI MOTELはお勧め。1泊税込み28ドルで非 常に清潔,自炊設備,食器などもある。
日本から電話で予約できる(要クレジットカード)。
★買出しはキャンモア,レイルウェイ・アベニュー沿いのSAFEWAY が夜11時までやっており,隣にリカーショップもあり便利。 隣のSOBEYSは10時まで。
★クライミングギア,ガスカートリッジ(プリムス)などはメインストリートのVallhalla Pureで揃う。夜9時まで営業。確実に購入が必要な物がある場合はメールで在庫と営業時間を確認すること。
★95号線から公園駐車場までの42キロの林道は未舗装だが ,いい道で特に4DWでなくても問題ない。ただしヘリスキーロ ッジへ行く道との分岐から先の2キロくらいが少々荒れ気味。
駐車場にトイレあり。
★時期によると思われるが,7月中旬では,蚊,ブヨ,ヌカカ などの刺す虫が多いので,気になる人は忌避剤,薬などを持っ ていくとよい。
★カナダ山岳会に入会し,ハット・オプションを申し込むと1 年前から小屋の予約ができる。
グループの中で1名がこの申し込みをしていれば,会員外のメ ンバーも含めて予約できる。
キャンセルについては10%のデポジットが取られるが,変更 後の確定金額がこの金額を超えていれば取られないようだ。
★ガイドでは小屋の滞在は7日が限度と書いてあるが,実際は ルーズな運用がなされているらしい。
7日を越える滞在を計画している場合は,予約の段階で確認し てみるとよい。
★小屋の水は一応フィルターを通してあるが,完全に滅菌はさ れていない。しかし,管理人は「自分は1ヶ月そのまま飲んでいるが問題ない。」と言っていた。我々も1週間加熱もせずに飲んだが,今のところ異常はない。
★外の蛇口,小川などで洗濯はできる。石鹸は不可。
★小屋の中はスリッパがあると快適。トイレは外にあるが,ス リッパで行っていた。
★調理器具,食器類はすべて揃っており,自由に使用可能。ガ スコンロ,電熱コンロ,パン焼きトースターまである。
★食料は棚に保管。冷蔵庫はない。
★就寝用マットあり。寝袋は夏用で十分。
★特に入山届を提出するなどのシステムはない。逆にいえば自 力救助が原則らしい。
★ロープは60mのものが便利。
★特に思い入れのあるルートがある場合は別として,現地でル ートの情報を積極的に収集し,人気のあるルートを選択した方 がいいと思う。地元クライマーは「今日どこ登った?」が挨拶 代わりである。

(参考資料)
★岳人624号 東京雪稜会1998年記録
★アルパインクライミングホームページ 福岡山の会2003年記録(前ページリンク参照)
・・・・・どちらもガイド登山
★Bugaboo Rock: A Climbing Guide・・・以前からあるクライミングガイドの改訂版。ヨセミテ式のトポが見やすいが,若干情報に誤りがあるので注意が必要。アマゾンで購入できる
★The Bugaboos・・・最近出た写真トポ主体のクライミングガイド。アプローチから下降路まで最新の情報が掲載されている。ちょっと高め。カナダ山岳会のホームページから購入できる。(準備編参照)
★バガブー周辺の地図(5万図)
National Topographic Series Maps・・・判がでかいので,実際に活動するエリアは片隅に載っているだけ。カラーコピーで携行用のものを作っていった。
82K/10 (Howser Creek) $11.95
82K/15 (Bugaboo Creek) $11.95
購入は準備編参照

バガの壁(準備編)