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錫杖岳本峰フェース「湯の街奥飛騨ぶらり旅」3ピッチ、105m、5.11c/d

 

2003.10.11〜12 メンバー:石際淳(岐阜ケルン山岳会)  横山勝丘(信州大学山岳会)

写真及びルート図

 

錫杖沢の岩小舎から牧南沢に入り、右俣沢を詰めると本峰フェースが現れる。圧倒的な大カンテをはさみ左右にはすっきりとしたフェースが並んでいる。初めてこの壁を見たのは大学3年の秋。一目惚れをした。大カンテの左にはすっきりとした弓状のクラックが左上しながら延び、フェースへと消えていた。はっきり言ってかっこいいライン。以来、常に頭の片隅にこの壁の事はあった。初めて触ったのはちょうど一年前。この時は時間切れのため途中まででおしまいだった。持病の妄想癖は更に膨らみ、登ってもいない2ピッチ目のムーヴを頭の中で何度も繰り返し、登り終えて雄叫びを上げる自分の姿が見えた←重症。今まで以上にフリーを頑張った。この開拓が直接的な原因ではないが、少なくともフリーが出来ずしてこのラインを登る資格はないと考えた。

 

10月11日ルート完成。壁の持つ雰囲気、ラインのかっこよさと合理性、ムーヴの面白さ、困難性、開拓のスタイル・・・自分の中では出来得る限りのことが出来たと思う。よいラインがあって、そこに開拓者の魂を込める。これがルート開拓の持つ魅力だと思う。今回はたまたまよいラインがあり、たまたまそのラインにうまい具合にホールドが続いていて、たまたまそこに目が行って良かった。これだけいいラインに見合うだけの開拓スタイルが必要と考えていたが、今回はそれもまたたまたまうまくいった。やれやれ。

 

去年のうちに1ピッチ目のラインは支点を作りトライしていた。今年は1ピッチ目をマスターでレッドポイント。2ピッチ目はとりあえず行ける所までとオンサイトでトライしたが、クラックの途切れるところでテンション。フックに乗ってボルトを一本打つ。そこから左に大きくトラバースしたところでもう一本打ち、更に上の大テラスでピッチを切った。とりあえず簡単な3ピッチ目を登り、一通り上までは抜けた。終了点から懸垂で1ピッチ目終了点まで降り、再度2ピッチ目をトライ。何度か落ちそうになったがこらえ、何とかマスターでレッドポイントした。

 

(アプローチ)

このルートだけを登るのであれば、錫杖沢を登り、岩小舎から牧南沢に入る。しばらく行くと右俣沢が左岸から入ってくるのでこれを詰める。本流を詰めていくと本峰フェース右端の大洞穴の基部に出る(見張り塔上部壁取付)。ここから壁の基部を左にトラバースし、大カンテを回りこむとすっきりした垂壁が現れる。取付は大カンテから30mほど行った所に残置のリングボルトが1本ある。真上にはピトンラダー、左上には比較的新しいリングボルトのラダーが残置されている。ここが取付である。錫杖沢出合から1〜1.5時間。実力のあるパーティなら前衛フェースのフリールートを登ってから継続してくれば充実した一日が過ごせるだろう。

 

1P目(40m,5.11b/c,横山リード)

試登跡と思われる比較的新しいリングボルトのラダーから入る。ラインはボルト沿いではなく、ルーファイが必要。3本目の上から左にトラバース。ホールドが細かく、悪い。最後の5本目の残置ボルトにクリップしてからは凹角をランナウトで登る。なお、ライン上で見つけた残置、使用した残置はこの5本のリングボルトのみであった。フェースに打ったボルトから左にトラバース。思った以上にトリッキー。あとは傾斜の緩くなったコーナークラックをナチュプロで登る。終了点はピトン3本。ナッツ等で補強するとよい。1ピッチ目に新たに打ったボルトは1本。去年の開拓時に、ビレー点としてルート途中の少し右に外れた場所にボルトを1本打ったが、これは今回使用しなかった。このボルトはハンガーを外してある。

 

2P目(40m,5.11c/d,横山リード)

ビレー点右から延びる見栄えのする弓上コーナークラックを登る。このクラック自体は5.10bくらいか。クラックが途切れたところからハング下のフェースを左にトラバース。ハングの切れ目から上のフェースに立ちこむまでの一連のムーヴがトリッキーかつパンプしてきてきつい。上のボルトから左上に見える大テラスに向かって更にトラバース。テラスに続くクラックまで来れば一安心だが、この手前の最後の一手までトリッキーなムーヴが続く。最後はランナウトする。2ピッチ目に打ったボルトは2本。終了点はロストアローとナイフブレード。ここもナチュプロで補強する。

 

3P目(25m,5.7,石際リード)

すぐ上に見える緩傾斜帯までフェースを自由に登る。思った以上に面白いピッチ。所々ナッツが決まるが、ランナウトする。緩傾斜帯に出たら右の立木を目指し、立木で終了。

 

下降は,ここから1ピッチ目終了点までまっすぐ下り、更に1ピッチで壁の基部まで。また、3ピッチ目終了点から更に上の岩壁を自由に登り、錫杖岳山頂に抜けても面白いかもしれない。

アプローチは駐車場から2時間強。3ピッチしかなく、わざわざ行く価値はないと思われるかもしれないが、それを補って余りあるほど本峰フェースはいい壁である。

 

ルートはフェースとクラックのミックスしたラインで、テクニカルかつストレニュアスなムーヴが続く。難しいムーヴはないが、ホールドが分かりづらい。グレードはホールドがわかりづらいことと、岩が(フリーの岩場に比べて)脆いこと、さらに高度感による恐怖も含めて若干甘く付いているかもしれない。ボルトは最小限に抑えてあり、かなりランナウトもする。フェース部分でいかにナチュプロを取れるかによって危険度がかなり変わってくる。特に2ピッチ目は1本目と2本目のボルト間隔は10mほどある。トラバースなので落ちるとかなりやばい目に遭う。ナチュプロの取れる場所を探しながら登ること。もちろん、ボルトの打ち足しは死刑。ただし、1ピッチ目最初のリングボルトラダーや終了点の補強等については再登するパーティの判断にお任せする。基本的には終了点はナチュプロで補強が出来るはずだ。

 

(ルート名について)

一緒に登った「がおろ」さんや「がおろ」さんの仲間との出会い。行き帰りは後輩たちが車に乗せてくれた。下山後、新穂高の知り合いのところにお邪魔し、風呂タダ、ビールタダ、昼食タダ、更に休憩室で寝かせてもらったらいつの間にか6時。夜はひたすら呑む呑む・・・。後輩たちが迎えに来てくれて大学に着いてみれば、宴会の準備が。そしてまた朝5時までひたすら呑む呑む・・・。ふと思った。これって旅だよな。いろいろな人との出会いや親切に触れた二日間だった。そもそも、3年間惚れたラインに会いに行くこと、これこそ旅。更には開拓の持つ怖さであり楽しさでもある「先の見えない不安」。これも旅には不可欠なもの。そんなことを大好きな奥飛騨錫杖で出来たことからこの名前を考えた。

そんなこんなの週末だった。最後にこの喜びを共有できた「がおろ」さんに感謝。

(横山記)

 

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