尾白川北坊主沢
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2004.12.29〜31
メンバー 石際,加藤

昔,春日井の小林君と西坊主を目指して何回か通ったこのエリアであるが,北坊主だけ登っていなかったので, アイスクライミングのロングルート未経験の加藤のステップアップも兼ねてここを目指した。
1昨年も同じ計画を立てたが,ラッセルに生気を吸い取られ敢え無く敗退した。そのときの記録
今回は登れた。これで,奥滑滝沢,滑滝沢,西坊主,北坊主とビンゴすることができた訳である。

尾白川の上流右岸の支流の中では入門ルートといわれている北坊主でも,わしらパーティーには結構登り応えがあり, いいルートだと思った。繋ぎのピッチも含めると8ピッチ氷が続き,登攀スピードのなさがもろに出て,千丈の岩小屋のベースに 戻ったのが,21時を回ってしまった。
しかし,ザッテル経由で坊主沢へ下降し,東壁を回り込んで東稜を下降。ちょろっとゲレンデで遊ぶのとは訳が違う総合的 な登山の醍醐味(醍醐ってヨーグルトのことらしい)を味わうことができた。

尾白川上流右岸支流
岳人450号「氷瀑王国・甲斐駒ケ岳」より

(行動概要)
12月29日(曇り時々雪)
竹宇駒ケ岳神社から雪のない登山道を登る。横手からの道との分岐を過ぎて,やっと雪が出てくる。 前回と比べるとかなり少ない。
山登魂パーティーと前後しながらのんびり登る。 お昼に5合目に到着。ここから千丈の岩小屋に降りる途中で赤布を見失い,またルートを外してしまった。 少し下流に降りすぎ,登り返して懐かしい岩小屋に着く。

山登魂パーティーが既に到着していたが,一人が下降途中で滑落し,顔面と腿を打撲してかなりひどい様子。 彼らは,しばらく休んでからオウレン谷へ降りていった。

岩小屋は貸切。バーボンを飲んでのんびりする。

神社7:10 分岐9:10 五合目12:00〜12:30 岩小屋14:00

12月30日(晴れ)
もち入りカレーうどんをかき込み,ツエルトを潰し,丸太で重石をして出発。
ヘッドランプを点け,歩きにくい谷を流水にはまらないように慎重に下降する。 1時間で二股に着く。
尾白川本谷を登るが,前回と比べると格段のスピードが出る。 天気も今日は持ちそうで,楽勝ムード。
見覚えのある正面ルンゼの滝を過ぎ,2本ほど枝沢を過ぎると,ちょっと見栄えがしないガレ場の北坊主出合いに着く。



ガレを少し上り,ちょっと傾斜のある水っぽい滝の基部から登攀開始。




1ピッチ目 石際リードで左のカンテ状に取り付く。 10mほど登ると傾斜の緩い滑状となり,アイスハーケンを打ってピッチを切る。 2ピッチダラダラとロープを伸ばし,その後コンテでF2下へ。 後続パーティーが追いついてくる。

F1上から望むF2。小さく見えるのがわし。(プリムラの本山さんからいただいた写真)



F2がこのルートの核心部。60〜70度のノッペリしたスラブ状の80m滝で岩が少し出ている斜めハング下で アイスハーケンのハンギングビレー。



フォローの加藤はもうふくらはぎパンパンで休みたそうであったが 急かして次のピッチへ。
このピッチのことを考えるとアイスハーケンは多めに欲しいところだ。後続パーティーの子は15mぐらいずつランナウト して登ってきた。

ここで既に13時をまわってしまった。F3下の二股状になったところからは左岸の尾根へ逃げられそうであった。 しかし,後悔したくないのでそのままF3へ。後続パーティーもラインを変えて同時に登る。

F3は,水が流れているところもあるが,やわらかい氷で快適に登れる。2ピッチで終了。



ここで既に15時。
加藤はかなりばてているようであった。ここまで登ると右側が壁になり尾根へ逃げるところがない。 シングルロープではF3の懸垂も大変なので,そのまま沢を詰めることとした。

ザッテルに後続2人パーティーと前後して着く。 彼らはプリムラ山の会のリーダーと本家武蔵野の若く元気のいい青年の2人組で,この下降路については始めての ようであった。
坊主沢への下降路である中間ルンゼは,上部が不安定なガレで。慎重に下り,急な雪の斜面に入る。 雪は安定しており雪崩の危険は少なそうだ。すぐにハングした滝の上に出る。幸い左岸の壁にアンカーになりそうな 潅木が生えており捨て縄を掛け20mの空中懸垂。プリムラパーティーも協力して下降する。

石際が先行し暗くなる前にできるだけ下る。小滝のみでクライムダウンできる。 右岸の尾根がコル状になっているところで坊主東壁へトラバースすることにする。 この時点で17:20。ついにヘッデン行動に突入。
ちょっと早くトラバースし過ぎたようで,東壁の基部よりかなり上に出てしまったのでプリムラパーティー先行で 急な浅いルンゼ状を基部まで下降する。加藤はガス欠状態。プリムラパーティーはポイントポイントで待っていて くれ,わしらはゆっくり後続する。

幸い天気は穏やかで,麓の町の夜景が美しい。

東壁基部は雪壁になっており,コンタクトラインは悪そうに感じたので,50mほど下の樹林帯をトラバースし,東稜 に出た。地形図を見る限り,乗越からオウレン谷への斜面は緩いようであるが,乗越より下部に出たため痩せ尾根となって しまい,結局,東稜を下降することになってしまった。東稜の下降自体は部分的に急なところはあったが,大きな岩場は ないので,1回のシングル懸垂で下降できた。
最後,尾根が広く緩くなり,千丈滝上に到着。明るいうちであれば案外いい下降路かもしれない。

(下降路補足)
昨年北坊主を登攀した山登魂の治田氏の話では,F3をVスレッドを支点にダブルロープ2回の懸垂でF2上に戻り, ここから左岸の尾根へトラバースした。しかし,ガイドにあるように1時間ではとても下降できなかったそうである。

オウレン谷へ降り立ちほっとしたのか,ここでへんな石にアイゼンを取られ,珍しく右足首内側の靭帯を損傷。冷や汗が 出るが,我慢して岩小屋に戻る。9時過ぎであった。
明日の下山のことを考えると不安はあったが,北坊主をすっきり登ることができた喜びで気分はよかった。 遅くまで食ったり飲んだりして12時すぎ就寝。

岩小屋5:15 二股6:15 北坊主出合8:15〜9:00 ザッテル16:00 岩小屋21:15

12月31日(雪)
起きてみると,足の腫れはそれほどでもない,テーピングでしっかり固定して登山靴のひもを締め一歩一歩呻きながら 歩く。5合目小屋で山登魂パーティーとまた一緒になる。彼らは西坊主狙いであったが,転進してオウレン左俣を登った そうだ。
登りはそれほどでもなかったが,黒戸尾根の長い下りは応えた。

岩小屋8:00 5合目9:30〜10:00 神社13:30

下山してみると,駐車場は一面の銀世界。
さらに降り続く雪にのんびり着替えることもできず,前回も立ち寄った20号沿いのサントリーレストラン「じんぐう」 (ソースカツ丼,千円がお勧め)で飯を食い,久しぶりに東京の実家へ帰る加藤を小淵沢駅へ送る。

インターへ行ってみると雪のため高速は通行止め。
しかたがないので,眠気防止にオレンジ・レンジをガンガンにかけながら,20号,19号と下道を走り岐阜に着いたのが22時であった。