――― 殺生 ――

 

私は,どちらかと言えば無信心なほうですが,霊的なものの存在や,言霊(ことだま)

といったことは,なんとなく信じています。

うちの子どもがゲームの影響か,すぐ「死ね」,「死んだ」などという言葉を使うと

ドキッとしますし,夜中に口笛を吹いてはいけない,夜,蜘蛛を殺すなとかいった

タブーについても気にするほうです。

 

お盆に帰省したときなど,「こんなときに釣りなんかするこってねえさ。」と昔から言われ

ていたような気がします。

身内に不幸があった場合にも,やはり,ある程度の期間は控えるべきなのかなと(現在は)

思っています。

数年前の話ですが,おばさんが亡くなって1ヶ月しか経っていないのに釣りに行った

(行こうとした)ことがあります。
小さいころから可愛がってもらったおばさんでした。

 

最初に気がついたのは,夜中に車を走らせている時でした。
明日入る谷は岩魚が多く,大漁が期待できました。それで,いつもの釣行には持って

いかないクーラーボックスを,おばあちゃんの家からわざわざ借りてきて用意したのに,

家を出る時忘れてきてしまったのです。

次は,谷沿いの林道を車で走っていて,なんか変な音がするので,車を止め点検

すると,特に荒れた道でもなく,なにかが刺さったわけでもないのにパンクしていました。
タイヤを交換し,またパンクしたら今度は帰れなくなるので,車を置いて,歩いて目的

の谷まで行きました。

かなり歩いて,本流を渡り,けっこう水量があるのに樹林で目立たない支流へ入り

ました。そして以前にも尺岩魚を上げているポイントに着き,いそいそとザックを開

けると,確かに入れたはずの釣り道具一式がない。
知らないうちにザックの蓋が開いてしまい,どこかに落としたらしいのです。

その時点で少し気味が悪かったのですが,せめて岩魚の魚影だけでも見ようと藪を

こいで上流まで行きました。

中流には大滝があり,その上流はまた穏やかな流れとなっています。

渕を覗くと遊んでいる岩魚の群れが・・・

そこの岩魚は無垢で,そっと近づけば隠れもしません。
その谷を教えてくれた地元の方は「拾うように岩魚が釣れる」と言っていました。
その時はそれで満足して家に帰りました。

そして次の日から大変でした。
どこでカブれたのか全身ボツボツだらけになってしまったのです。
痒い〜の,痒い〜の,2週間ぐらいはひどいものでした。
カブれて病院へ行ったのは初めてでした。

きっと,おばさんが根性の悪い私をたしなめてくれたのだと,
今では思っています。

 

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