御嶽

★継子岳千間たる沢源頭「ぼくらのライン」

★濁河温泉から尺ナンゾ谷を経て頂上往復

 

たまには変わったコースもいかが?

石際 淳(おじんドルフィンズ,RightFast

 

御嶽の山スキーといえば,おんたけスキー場から田の原を経て剣ヶ峰を往復するものと御岳ロープウェイスキー場から金剛堂を経て剣ヶ峰を往復する2つのコースがよく滑られている。メジャーなコースはクオリティが高いのは確かであるが,地図を広げて地形を想像し,新しいラインを引いてみるのも山スキーの魅力の一つではないだろうか。今回はあまり記録をみない2つのコースを紹介する。

 

「ぼくらのライン」 ルート図

チャオ御岳スキー場から継子岳を見上げると頂上から左のスカイラインに沿って落ちている美しいシュートが目にとまる。2005年4月に岐阜ケルンの春日井宏幸と滑降し,「ぼくらのライン」と呼ぶことにしたこのシュートは,トップから森林限界までストレートな斜面が続き,斜度はそれほどでもないが,抜群の高度感と斜面状況によっては失敗の許されない緊張感のある斜面である。スキー場からそれほど時間がかからず往復できるので,継子岳から裏の四ノ池への滑降も併せて楽しみたい。
 まず,スキー場トップから樹林帯を左上。森林限界を越えないようにトラバースし,約1時間で千間たる沢源頭。ここから傾斜が強まるので早めにアイゼン登高に切り替える。斜面の状況もチェックしたい。浅い沢状をどんどん登り,上部で左の尾根に取り付き岩混じりの斜面にピッケルをしっかり打ち込みながら慎重に登る。独立峰だけに突風にも注意が必要である。やがて傾斜が落ち継子岳頂上に着く。
 四ノ池への斜面は山頂直下に雪がなく,飛騨頂上方面へ少しトラバースしてから滑り込む。ザラメの快適なスキーが楽しめる。のんびり継子へ戻り,滑降の準備に移ると緊張感が高まる。
 頂上からは少し北東斜面を滑り,登りに使った尾根を乗越し沢に入る。ここからは森林限界まで一直線,転倒は許されない。慎重にジャンプターンを繰り返す。高度が下がると雪も緩んで楽しい滑降となる。樹林帯まで降りたらスキー場に向かって斜めに滑り,時折出てくる広い斜面を楽しみながらスキー場トップ直下に戻る。
 適期はスキー技術にもよるが4月上旬。厳冬期の滑降は難しいと思われる。また,この周辺ではスキー場から右手の沢を滑った記録もある(ルート図参照)。

なお,アプローチとして東隣のマイアスキー場から本コースに入ることも可能であり,マイアスキー場トップから直上し継子岳に登ることもできるが,マイアスキー場ではスキー場からの登山を禁止していたこともあり,事前に照会するなどしてトラブルは避けるべきである。

 

尺ナンゾ谷 ルート図

尾根取り付きの渡渉と樹林帯の読図を除けば,非常にスキー向きのルートである。オオシラビソの原生林から中間部の広く明るい谷,そして継母岳と剣ヶ峰の鞍部周辺の広大な斜面はスキー天国と言っても過言ではない。なお,兵衛林道から濁河温泉に抜ける林道工事が進んでおり,兵衛谷に橋が架かれば気楽に取り付けるようになると思われる。
 御嶽少年自然の家から新しい林道を兵衛谷へ向かう。堰堤のある小谷を渡り赤布に導かれてかなり上流の渡渉地点に着く。飛石で対岸へ渡りシール登高に切り替える。急な沢状を1850mまで登ると傾斜が緩みシラビソ,オオシラビソの原生林を小鳥の声を楽しみながらのんびり登る。途中藪のうるさいところもあるが,あっという間に上俵山に着く。

最低鞍部から尺ナンゾ谷へ降りた地点は,谷が明るく開け,のんびりできる場所である。ここから少し登ると二股となり,左の谷に入るとすぐに10mの滝が立ちふさがる。幸い周囲の地形がやさしいのでシールのまま右岸を巻ける。小沢を左に分けると谷は開けて広いスキー向きの谷がずっと上部まで続く。標高2400mで谷がクランク状に曲がりしばらく登ると,広大な斜面が開ける。傾斜は20度前後。シールでまっすぐコルを目指す。

継母岳に登る場合は,コルにスキーをデポすることになる。剣ヶ峰方面はなおも広い斜面が続き,標高2950m付近で雪が切れる。ここから剣ヶ峰まではアイゼンでほんの一息である。頂上から滑る場合は左手のラインが繋がっている。

滑降は快適そのもの。広大な斜面から続く広い谷を楽しく滑り,あっという間に標高200m付近に着いてしまう。その下は傾斜がないので,雪が重い場合は直滑降。滝もスキーのまま巻いて上俵山への取り付きに着く。
 上俵山を越えてからは地図とコンパスで方向を確認しながら原生林を滑る。渡渉点への降り口を見過ごさないよう注意が必要である。渡渉は濡れても心配ないので元気よく渡ろう。あとはのんびり自然の家まで歩く。

適期は3月〜4月。積雪量次第でパウダーの時期も可能である。

また,濁河温泉からのルートとして草木谷も興味深い。尺ナンゾ谷と対照的に上部は急斜面である。

 

「ぼくらのライン」

アプローチ●JR中央本線木曽福島駅(連絡バス1時間20分)チャオ御岳スノーリゾート

2万5千図●胡桃島,御嶽山

問い合わせ●高山市観光課TEL 0577-32-3333,チャオ御岳スノーリゾートTEL 0577-59-3620 

アドバイス●森林限界付近でハードバーンなっている場合は,登行,滑降ともに危険が伴う。アイゼン,ピッケルは必携。

参考タイム●スキー場(1時間)森林限界(2時間)継子岳(四ノ池方面滑降:1時間)(50分)スキー場

山行日●2005年4月9日

参考資料●がおろ亭「岐阜県の山スキールート」http://ojin.nobody.jp/

 

尺ナンゾ谷

アプローチ●JR高山線飛騨小坂駅(濃飛バス(要予約)約2時間)濁河温泉スキー場(徒歩20分)御嶽少年自然の家

2万5千図●胡桃島,御嶽山

問い合わせ●下呂市観光商工部観光課 TEL 0576-24-2222,飛騨小坂観光協会 TEL 0576-62-3111,御嶽少年自然の家TEL 0576-62-3655    

アドバイス●下部の樹林帯では読図技術必要。しっかりしたリーダーとなら山スキー初心者でも楽しめる。

参考タイム●御嶽少年自然の家(40分)渡渉点(1時間20分)上俵山(2時間40分)2950m地点(30分)上俵山取付(1時間30分)渡渉点(40分)自然の家

山行日●2006年5月5日

参考資料●がおろ亭「岐阜県の山スキールート」http://ojin.nobody.jp/

 

 

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