摩利支天中央壁独標ルート〜上部ジェードルルート
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2003年8月2日〜3日
メンバー石際 淳,加藤 毅

摩利支天の岩場のなかでは,比較的ポピュラーなルートとして 紹介されている,独標ルートを登ってきました。
アプローチも比較的近く,ピッチ数も少ないので,気軽に行ける ルートと思い計画しましたが,近年,ほとんど登る者がいないた めか,アプローチの踏み跡もわかりにくくなっており,ルートの 残置も古くなったり抜けていたりする上,草付も増えていて, 思ったより,ワイルドなクライミングを楽しむことができました。
特にジェードルの1ピッチ目は久々に人工する者にはリードする のにかなり気合が入りました。
戸台側から入山しましたが,クライマーには山行中一人も会わず, 当然,壁は貸切。少し寂しかったです。

1日目
北沢峠までバスで入山。仙水峠までのんびり歩き,左手へトラバ ースぎみに踏み跡をたどり,水晶沢へ下る。赤布が適当にあり ルートはわかりやすい。水晶沢は水量があり,水が補給できる。
中央壁へのアプローチとしては,下降して摩利支天沢を登るもの と,少し遡行して上部の二股から西山稜末端を経て南西稜のコル へ出るものが紹介されているが,我々は水晶沢下降点から直接 対岸の尾根に取り付いた。

しばらく尾根を登ると石楠花の強烈な藪となるので右のカレ沢 に入り,少し登って右の南西稜に移りコルへ出た。悪場もなく 登りやすかった。コルははっきりしておらず,ガスっていたの で通過してしまったが,少し登って右手に中央壁が確認でき たのでコルまで戻った。
コルへは西山稜から踏み跡が上がってきている様であったが, はっきりとは確認できなかった。

コル(正確に言えば小プラトー)から南西稜を少し下った所に 懸垂下降の残置スリングがある。ここから急な潅木帯をクライム ダウンするが,すぐ行き詰まり20mほど懸垂下降する。尾根上の 懸垂下降地点からでも25mほどの懸垂で緩傾斜地点まで降りる ことができるので,そのほうがお勧めである。

中央壁の基部へは痛いアザミの藪を掻き分けトラバースする。
基部にはかなりの水量が流れており水が補給できる。(秋にも あるかは不明)
独標ルートはさらにバンド状をかなり登った ところにある。二つの背の低いハングが並んでいて基部はテラス状になっていて,わかりやすい。

この時点でちょうどお昼。時間的に取り付けないことは ないが,なまけ癖が頭をもたげてきて,結局,早々に行動を 打ち切り,のんびりすることにした。焼酎をちびちびやりながら ラジオを聴いたり,昼寝をしたりする。


夕方,腹ごなしに南山稜の腰まで登ってみる。中央壁の上部が 見渡せ,ジェードルルートもよくわかった。非常に美しい壁で ある。
テラスに戻り,早い夕飯を食らい,早々にシュラフカバーに潜り込む。
時折,野猿の声がするだけの静かな夕べである。

北沢峠7:15 仙水峠8:15 独標ルート取付11:45

アプローチ図


2日目
野鳥の声で目が覚める。少し寝坊したようだ。パンとコーヒー の朝食を取り,準備して登攀開始。
1ピッチ目は独標ルートのハイライトで加藤に譲る。最初から被り 気味の凹角のA1またはフリー5級+で,最初はフリーでトライし たが,荷物が重いせいか非常に苦しみ,結局アブミを出して抜けた。
プロテクションはクラックからしっかり取れる。


後は順調にロープが伸び,50mいっぱいでコールが掛かる。
私もフリーでトライ。右壁が湿気ていたので微妙なところがあっ たが,ジャミングしながら,フリーで行けた。
バンドをトラバースしピナクルから下り気味にチムニーに入る。
左のカンテをクラックを使いながら快適に登ると,少しザレているが 白い「日本ばなれ?(RCC著「日本の岩場」)」したフェースとなり,風化したルンゼを左上してブッシュ帯に入る。

木登りなどしながらそのままロープを伸ばし,30mで長衛バンド。 バンドを右にトラバースし岩場をまわりこむと,上部岩壁の美しい フェースが現れる。顕著なジェードルは残念ながら少し草付が目立つ。


ジェードル基部のテラスまでは3級ほどのスラブだが,適当なビレーポイントがないので注意がいる。我々はコンテで登ってしまった。

ここで順番からいけば加藤リードの番である。ルートは見た感じでは,草付,支点の古さなどから相当困難なものになると思われたが,加藤が当然のように「行きます」と言うので,任せることにする。


予想したとおり,2ピン目でギブアップした加藤とリード交代。
のっけから最上段どころかリストループ乗ったり, それでも届かないところはクラックの草付をはがし,ブラインドで 決めたナッツに乗るなど,中間地点までで相当神経を消耗した。


救いは要所でカムが決まりバックアップできることである。
登山体系ではフリーで6級となっていたが,とても私にはむりであった。

     中間のテラスに這い上がり,上半のフェースを見ると,そこは 登山体系で独標ルート(ジェードルの間違い)として紹介されている岡田昇氏の左の写真の撮影ポイント (快適そうなフレークをフリークライミングしているシーン)であった。






ここから右のフェースを相変わらず信用できない支点を探しながら 小ハング下まで登る。このルートのすばらしさはボルトが少なく 合理的なラインを取っていることだ。
ハングの下は非常に風化が進んでおり,左の凹角に移るのが非常にやばかった。

あとはフリーで凹角を抜け,テラスに這い上がるとほっとした。


加藤も辛抱強くフォローしてきたが,テラスに着くと相当ばてている 様子なので,次も私がリード。ザックを背負っていると入りにくい チムニーからチョックストーンを乗越し,上部は樋状の傾斜のゆるいチムニーで問題なかった。カンテを左に横断し大テラスで実質的な登攀は終了。あと20mロープを伸ばして白ザレに着いた。

            誰かさんの真似をしてポーズを決めてみる


ルート図

明るい白ザレはヨセミテの岩場を思い出させた。
重い登攀具をパッキングして北沢峠の最終バスに間に合うよう歩く。
思ったより早く着き,ビールを2本飲む時間もあった。

取付6:00 終了12:00 摩利支天13:00 双子山経由 北沢峠15:30

参考ギア
ロックス中間サイズ,エイリアン黄,キャメ3番まで
その他,ハーケン,ボルトは携行したが使用せず