錫杖岳烏帽子岩前衛フェースP4「チムニールート」〜北東壁「左ルンゼ」

1991.9.7  石際 淳  東田良治

 

錫杖前衛フェースのなかで3ルンゼから右に位置するルートは,終了後は3ルンゼのコルから裏のルンゼへ懸垂下降してクリヤ谷に下りるのが普通です。3ルンゼより左にあるルートでは終了後烏帽子岩や本峰フェース等へ継続できるのに,3ルンゼやP4フェースに取りつくと午前中で登攀が終わってしまい,またクリヤ谷から前衛フェースに戻る気にもなれず,下って温泉にでも入って帰ろうかということになります。それもいいのですが,3ルンゼのコルから横断バンドまでの40mのフェースが登れれば,も少し色々バリエーションを組め「充実した〜」と言える登攀ができるのではないかと考えたわけです。

 

7:00槍見温泉出発。8:15チムニールート取付着。8:30登攀開始。

このルートは前衛フェースの1番右にあるルートで,岩の脆いP4フェースの中では岩もしっかりしていて,オールフリーで楽しく登れました。10:50終了。ブッシュをこいで11:20 3ルンゼのコル着。

 

ここからが今日の僕たちはちょっと違います。行動食をほおばりながら2・3間リッジ側のフェースをよく観察。これまで何回も見ているはずのこの壁は,いざ登ろうと思って眺めるとほぼ垂直でちょっと脆そう。濡れているところもあってかなりヤバそうに見えました。目先を変えて北東壁側を観察すると,3ルンゼのコルのすぐ裏のガリーから北東壁に突き上げているルンゼがいいラインみたい。では登ってみましょうと12:00登攀開始。

 

コル横の4mほどのフェースを登り,右へどんどんトラバースしてルンゼに入りハーケンを打ってピッチを切る。その上にチョックストーンの挟まったF1があり僕がトップで登っていくとガーン!なんと古い残置ハーケンが。なるほど昔の人も目の付け所は同じやったのかと感慨にふけりながら,フレンズをかまし気持ちよく越える。

 

すぐにF2。濡れているのでちょっと微妙。F2を抜けるとルンゼが少し開け凹角となり上へ続いている。右のブッシュのテラスに入りピッチを切る。今度は東田さんの番。右にトラバースしてルートを探すが行き詰まり,元のルンゼに入る。ルンゼ左壁の階段状フェースからルンゼ上部へ登っていってビレーポイントからは見えなくなりました。

 

やがてハーケンを打つ音が聞こえコールがあり僕がフォローする番です。下の階段状フェースは問題なかったけどその上が傾斜の強い濡れたフェースになりホールドが見つかりません。「どおやって登ったのー」と聞くのも恥ずかしいので濡れたフットホールドに立ってじわじわ体を上げていくと大きなホールドに手が届き登れました。ルンゼを抜けるとそこは前衛フェースの頭の気持ちのいい草原でした。13:30終了
 

左ルンゼ内の各滝はそれぞれ面白いフリークライミングで越えることができ,岩もしっかりしていてプロテクションもしっかり取れます(もちろん自分で)。ギアはナイフブレード4枚ぐらいとフレンズ中間サイズが3個ほどあればいいと思います。

 

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