秘境 乗鞍岳恵比寿尾根〜肩の小屋〜権現池〜岩井谷 スキー縦走

1996.4.20   石際 淳  小林 恒

  

高山市内から乗鞍岳を望むとき,剣ヶ峰の下に広大な雪原が広がっているのが目に入る。この乗鞍岳の西面の斜面は下部にスキー場もなく(開発の計画はあるらしい),積雪期は林道も除雪されないため,アプローチが長いせいか,これまでの山スキーの記録がなかった。

昨シーズンから二回の試登を経て,今回一日で恵比寿尾根から畳平・肩の小屋・権現池経由で西面の雪原にすべり込み岩井谷に降りるコースをトレースすることができた。

 

乗鞍西面

 

5時10分,岩井谷林道の車止(1080m地点)から,スキーをかついで歩き始める。小雪がちらついている。5分ほど林道を歩くと,積雪があり,シール登行。6時50分,1490m地点から左の尾根に取り付く。カラマツ林の急登を100mツボ足で登り,ゆるやかな尾根上に出る。スキーをつけるがブッシュがうるさく,2・3回スキーをはずして引っ張って歩かなければならない。

 

1800mくらいから大シラビソの原生林となり登行も快適となるが,地形は複雑である。このあたりで,小林のビンディングのヒールピースが不調で,滑走時に固定できないことがわかる。体調の方も今一つで,時間がかなりかかっている。12時,大丹生池前の2300メートルの凹地に付く。ここから左の小尾根を乗越すのであるが,急登で,雪崩の危険を感じた。

大丹生池は広大な雪原で気分がいい。1泊であればここは最適なキャンプサイトだ。
 

ここから鶴が池に続く沢を登る。2450mから150mほどの登りがクラストして急であるので,ツボ足でキックステップで登る。2600mから,乗鞍連峰の広い頂上雪原の一角に入るが,風が強く,ガスがかかってきた。気温も下がり,鼻先も凍傷になるくらいだ。完全にホワイトアウトとなり,地図,コンパス,高度計と頭をフル回転させ,肩の小屋に向かう。西斜面はアイスバーン,東斜面は新雪が積もり雪崩の危険があり,スピードが上がらない。15時40分,やっとで肩の小屋着。

 

休憩もそこそこに,剣ヶ峰はあきらめ,直接権現池に向かう。朝日岳のコル経由で,コンパスだけを頼りに権現池に降り立つ。16時30分,10m先も見えないホワイトアウトの中,なんとか西斜面に出る。
 

ここからすぐスキーで滑走したいところであるが,ホワイトアウトの上,小林のスキーが使えず,私もつきあってアイゼンで2750mまで下る。斜面はクラストと新雪のミックスだ。ここでもう我慢できず,小林にことわりスキーを着け滑降開始。と言っても,コンパスを片手にプルークで,方向を定めながら下る。2450mあたりからシラビソがポツポツ出始める。ガスも切れ始め,小林もスキーで下ったほうが早いと判断し,ヒールピースをシュリンゲで仮に固定し滑降。新雪かほどよく積もったまばらな林間滑降は快適であった。
 

2030mで右の尾根に移ったころには,日も暮れ,ヘッドランプを出し,なおもコンパス頼りに下る。途中,もうあわててもしかたがないので大休止をとる。ヘッドランプを消すと真っ暗闇と思いきや,空を見上げると星が樹間からみえる。

 

小林もさすが百戦錬磨,今ごろになって調子が出てきた。20時12分,1820mの林道にピタリと出る。ここから廃道となり,わかりにくい林道をたどり,途中カラマツ林の中を近道しながら,岩井谷橋に22時10分着。もう迷うことはないが,冷え込みでガリガリになった林道のボーゲン滑走にひざが悲鳴を上げるころ,23時15分車止に着いた。
 

権現池西斜面は,上部はフラットなバーンで,森林限界も乗鞍のほかの尾根より低く,森林限界に入ってからも,オオシラビソの疎林が続くのですばらしい滑走コースであった。なお,恵比寿尾根は地図で見るより複雑な地形で,スキーでの下降は楽しめないが,登高ルートとしては変化があり面白かった。岩井谷に出てから車止までは明るいうちであれば1時間ほどで下れる。

 

 

 

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