白山 山スキー「1粒で2度おいしいアーモンドグリコ計画」 別当出合〜南龍ヶ馬場〜地獄谷〜大白川ダム〜大倉尾根〜白山奥宮〜万才谷〜別当出合(One day ascent

 

1993.5.15   石際 淳   小林 亘

 

――― プロローグ ―――

 

僕たちは白山東面の山スキールートの白眉として知られる(ほんとに?)地獄谷を滑降したいとこの数年考えていたが,アプローチの問題がありなかなか実行できないでいた。徒歩や自転車によるアプローチも考えたが,どちらにしても林道で長時間苦しまねばならず, どうせ苦しむなら楽しく苦しもう(変態か?)と言うことで石川県側から白山を乗越し地獄谷を滑降後その日のうちにまた戻ってくることを思いついた。

 

僕たちはこの計画を「1粒で2度おいしいアーモンドグリコ計画」と名づけ,4月26日,小林のプレス機械修理道具満載のバンにスキーを積み込み,一路,白峰村へ向かった。ところが市ノ瀬までしか車が入れず,あきらめ,チブリ尾根往復でお茶を濁して帰ったのであった。

 

――― そして半月後 ―――

 

山岳会のみんながジャンダルム飛騨尾根や北鎌に入っているのに1人で三俣蓮華・双六あたりを滑りまくった連休も終わった。今年はまだ雪がありそうなので,今度は単独で「アーモンドグリコ計画」を実行しようと計画書を出すと,ちょうど小林もその日に代休がもらえたと言うので,また二人で白峰村へ車(今度は鮎沢さんのパジェロ)を走らせた。さすがに今度は別当出合まで入ることができた。サンルーフを開け,流れ星を見ながらビールを飲む。

――― はたしてアーモンドグリコは二度おいしかったか ―――

 

次の朝,割と早く起きることができた。小林は相変わらず寝起きが悪い。別当谷の橋を渡り,夏道から飯場跡に出ると残雪が十分ありスキーを引いて歩く。今日は長時間の行程なので,途中でオーバーヒートしないようセーブしながら歩く。甚之助ヒュッテを過ぎ黒ボコ岩への道と別れ南龍ヶ馬場へトラバースする。尾根を回り込むと別天地のような雪原が広がる。小屋で一本立てた後,谷沿いに登り,2200mのコルに出る。ここが地獄谷の入口だ。

 

いつものようにガムを1枚かんで肩の力を抜く。入念に準備して,セーノで二人一緒に谷に飛び込む。硬いバーンを5・6回ジャンプターンするとすぐに谷底に入る。雪もゆるみ適度な傾斜の谷を一気に滑り降りる。両岸からいくつか急な谷が合流してくるが,不思議なことに林道に出るまでほとんどデブリがなかった。クライマックスはほんの25分ほどで終わり,谷の水流が見えだしたあたりで林道に出た。

 

山菜を物色しながら大白川ダム湖畔を登山口に向かう。大倉尾根の登山口にはやはり誰もいない。僕たちはこのあたりを借り切ったような気分でベンチに寝転んだり,濡れた靴下を日なたに干したりしてくつろいだ。
 

しかし,僕たちはまだ今日の行程の半分を終えただけなのだ。重い腰を上げ,大倉尾根を登りにかかる。やはり足にきている。「こりゃ1粒で2度苦しいやな。」などと軽口をたたきながら1時間ほど登ると雪が多くなったのでシール登高に切り替える。非難小屋を過ぎて少し登ると尾根が急になったので右手のカンクラ雪渓に入り室堂を目指す。

 

このあたりで風が強くなりガスがかかってきた。気温も下がり手足がチンチン痛い。室堂よりも頂上よりに出て,ハイマツが出てきたのでスキーを担いで夏道を登る。ここまで来ると別当からの登山者が多い。奥宮に着き,僕たちは丸い案内のプレートをたたいて歓声をあげた。寒かったが,祠の蔭に入りビールで乾杯する。

 

さて,最後の滑降だ。頂上付近は雪が少なく100mほど歩いて下り滑降開始。最初ブレイカブルクラスト気味で足も疲れて思うようにすべれない。万才谷入口あたりは雪もゆるみ,小林も「雪がよければ,こんなもんだー」と言いながらテレマークをビシバシ決めて降りてくる。万才谷の中はデブリであまり快適ではない。

 

南龍ヶ馬場の手前で右へトラバース。甚之助ヒュッテでまたビールで乾杯(何本持って行ったのでしょう?)。後は山スキーヤーのシュプールでゲレンデのようになった尾根をのんびり滑るのみである。

 

タイム

別当出合5:20 ― 甚之助ヒュッテ7:15 ― 南龍ヶ馬場8:15 ― 2200mコル8:35 ― 地獄谷滑降開始9:00 ― 終了9:27 ― 大白川ダム登山口10:10〜10:45 ― 大倉尾根避難小屋12:50 ― 白山奥宮15:35 ― 滑降開始16:10 ― 甚之助ヒュッテ16:50 ― 別当出合18:40

 

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