黒部川黒薙川柳又谷(敗退記)
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1997年8月14日〜17日
森田尚樹,石際

8月14日
発電所までトロッコ軌道を歩く。その後は冬期歩道を歩くがヘッドランプが必要。左岸に渉ってからは崩れているところもあり。コウモリがたくさんいた。外に出るとアブ多し。
下の廊下は水量少なく徒渉はやさしい。広河原にすぐついた。谷は前々年の大雨の影響か,荒れて倒木が多い。

飛竜峡入口の3m滝はシャワークライムしたが,その上の大渕は左から巻くことにする。先行パーティーに追いつく。大高巻となり,150mほどブッシュを登り,尾根を乗越してタンバラ谷上にアップ2回で降りる。

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カシナギ峡は腰までの徒渉あり。1回ロープ出す。14:00河原に抜け,テンカラを振るが荒れ谷で魚影なし。死人谷手前の小沢脇でキャンプ。アブと蚊に悩まされた。

黒薙駅7:57 北又堰堤9:20 カシナギ深層谷出合10:30 楊河原(死人谷手前)15:00

8月15日
ヨモギ谷あたりでテンカラを振って35cmほどの岩魚を2匹掛ける。不思議なことに餌釣りの森田にはあたりすらない。後で知ったことだが数日前にプロの釣師数人が雑誌の取材で入渓し釣果1匹だったそうである。大雨で谷が荒れ,岩魚はほとんど流されてしまい,尺ものだけが僅かに残ったようだ。

谷には大量の岩石,土砂が入っており,谷が埋まり,渡渉も楽である。

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あっという間にオーレントメノ滝に着き,右のバンドから抜け,巨岩帯,中ノ廊下もなんとなく過ぎ,昼前に上の廊下入口まで来てしまった。

右岸の台地上でキャンプ。森田が偵察に行き,S字滝は難しそうだと言う。半日ウオッカとバーボンを飲み,岩魚を焼いてのんびりする。アブおらず,蚊も少なく快適。

岩魚を焼きながら,うれしそうな森田
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テン場6:45 ゼンマイ谷出合10:30 ササゴマタ谷出合上台地11:40

8月16日
S字滝は左からドロカベを登り,アップ1回で巻く。ここから先は幅4〜5mほどの完全な廊下。逃げるところなし。
雪渓も出る。腰ぐらいのへつり,渡渉を繰り返し進む。
途中,急に水量が増え,氷の塊や倒木が流れてくる。スノーブリッジが崩れたのであろう。岩の上で少し待つが,水量は減りそうにないので,そのままで突っ込む。

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前方に7mほどのナメ滝があり,左から登ると,両岸がハングした7m滝が出た。右壁が登れそうなので,空身でナメ滝上の激流を跳び越し,ルンゼ状で上部がボロボロの垂壁になった壁に森田リードで取り付く。

このジャンプに失敗したら黒部の藻屑となる
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気休めのハーケンでランニングをとりながら,25mで滝上のカンテに出る。フォローするが,こんなとこよう登ったなという感じ。次,石際リードで草付きフェースを登り,ブッシュ帯をもう1ピッチ延ばし,大木のある尾根に出た。私はもう谷に降りたくなかったが,森田はまだ行くと言うので,気合を入れなおしアップ2回でまた暗い井戸の底へ・・・

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ここからずたずたのスノーブリッジがいくつか現れ,その下を全力ダッシュでへつって行く。水は氷のようで私の左足はつりかけていた。

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暗いトンネル
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六兵衛谷がスノーブリッジの下で出合い,ここを抜けると廊下が2mほどに狭まり,迫戸の滝2mがすごい水量を吐き出している。

森田は空身で取り付き,右壁にハーケンを打ち滝を這い上がろうとするも,水圧に負けどうしても抜けられず,氷水に体温低下し下流の岸に退却する。震える体を温めるため羊羹やビスケットを口に入れ滝をしばらく見つめていたが,引き返すことにする。

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スノーブリッジをくぐり,左岸に入るルンゼに入る。ガレの詰まった急なルンゼを詰め,最後2ピッチだけロープを出し,ブッシュの尾根に入りホッとする。

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藪漕ぎ30分で大ナル谷へ下る。

心休まるコケの美しい沢
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ここからはもう危険な所はないが,ガスのため詰めを右にとりすぎ雪渓から藪尾根に入ったので非常に疲れた。

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猫又山ではお花畑が我々を迎えてくれた。

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ここからハイマツ漕ぎ1時間半で清水岳頂上。草地に転がって,ラーメン食って酒飲んでツエルトかぶって寝た。

テン場6:20 上ノ廊下迫戸の滝下11:00 尾根上12:00 大ナル谷12:30 猫又山16:00 清水岳17:30

8月17日
日の出とともに起床。

清水岳の朝
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夜露をお日様で乾かしてから下山。欅平は人・人・人でのんびりする気にもなれず,すぐトロッコに乗り宇奈月へ向かう。今年の夏も終わった。

清水岳7:00 不帰岳避難小屋8:10 祖母谷温泉11:30 欅平12:50